核家族化が増えるなかで、実家で一人暮らしをしていた親が突然亡くなってしまい、発見が遅れてしまうケースが多くなりました。
万が一そのようになった場合、相続した実家は『事故物件』となってしまうのでしょうか。
もし、事故物件となってしまった場合、住む予定のない実家を売却することはできるのでしょうか。
今回は「事故物件は売却することはできるのか?」売却するためのポイントについてお伝えしていきたいと思います。
1:事故物件とは
そもそも、事故物件とはどのような内容の物件なのでしょうか?
「その物件で事件があった」「その部屋で死亡した人がいる」そんなイメージを持っている方が多いと思います。
実際には、法律で事故物件について明確な基準は定められていません。
それにより、不動産の取引において事故物件であると判断されたりされなかったりと判断が難しい状況にあり、過去にはトラブルに発展してしまうこともありました。
こうした状況を受け、2021年に国土交通省による「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」が公表され、基準が明確になりました。
不動産売買において事故物件とは「心理的瑕疵」の告知義務がある物件を事故物件と呼びます。以前、『中古戸建の査定価格はどのように決まる?』のコラムのなかで「瑕疵」には「物理的瑕疵」「法律的瑕疵」「心理的瑕疵」「環境的瑕疵」の4つがあるとお伝えしました。
そのなかで、心理的瑕疵とは不動産自体には問題がない場合でも、過去に人の死が発生し住む人に心理的嫌悪感を与えるような住み心地に欠陥があることを指します。
1.1:告知義務がある
「事故物件なら購入したくない」と思う方は多いですが、瑕疵を伝えずに契約した場合、契約不適合責任を問われ、契約解除や損害賠償を請求されることもあります。そのため、瑕疵がある不動産は瑕疵について告知をする義務があります。
国土交通省のガイドラインでは以下のものは、相手方の判断に重要な影響を及ぼすものと考えられるため、原則として告知が必要とされています。
・他殺
・自殺
・事故死
・その他原因が不明の死
・自然死、不慮の事故でも特殊清掃が必要とされた場合
1.2:告知義務がない
しかし、瑕疵がある不動産すべてに告知義務があるわけではありません。
国土交通省のガイドラインでは、以下の内容は告知の必要はないとしています。
・自然死(老衰・持病による病死)
・日常生活の中での不慮の死
・賃貸物件の場合は、該当する事案でもおおむね3年が経過した場合
・隣接住戸や集合住宅で日常使用しない共用部分で自然死や不慮の事故死以外の理由で人が死亡した場合
2:事故物件の売却相場価格
そもそも売却できるのか疑問をお持ちの方もいらっしゃると思います。
事故物件への捉え方は人それぞれなので、全く気にならない人もいれば、どのような事故でも物件で死亡した人がいるという事実に対して許容できないという人もいます。
購入を希望している人の考え方次第では売却価格を大幅に下げずに売却できることもあります。
では、事故物件の売却相場はどのくらいなのでしょうか?
売却価格の相場は通常の相場より10%〜50%ほど低くなる場合が多いです。
自然死、孤独死、事故死の場合10%〜20%、自殺の場合20%〜30%、他殺の場合は40%〜50%程度安くなると言われています。
あくまでも相場であり、事故の内容や程度によって売却価格は変わってきます。
また、物件の立地状況や周辺環境によっては事故があった場合でも、売却価格を下げることなく売却できる可能性もあります。
3:事故物件を売却するためのポイント
なかなか売却が難しい印象のある事故物件ですが、もし相続することとなった場合、なかには事故があったことを忘れたいのでできるだけ早く手放したいと思う人もいらっしゃるかと思います。また、物件を所有しているだけで維持費や固定資産税など費用もかかります。
ここでは売却するためのポイントをご紹介していきます。
3.1:リフォームやクリーニングを行う
事故や事故状況によりますが、事故があった物件への捉え方は人それぞれといえども、そのままの状況で売却することは厳しいため、室内のクリーニングは必須と考えてよいでしょう。
通常のクリーニングでは対応できないような「汚れ」や「臭い」などは特殊清掃が必要になります。
また、神社やお寺にお祓いを依頼することで、事故物件への不安を和らげることができます。
3.2:一定の期間をおいて売却する
事件や事故が起きた直後の物件は、どうしても悪い印象を持たれてしまいます。
売却を急ぐ必要がないときは、期間をおくことで事故への嫌悪感が薄れ、売却しやすくなる可能性があります。
3.3:更地にして売却する
記憶に残るような事件や事故があった物件の場合、ハウスクリーニングや特殊清掃を行ったとしても悪い印象はなかなか払拭できないものです。
その場合、建物での売却を断念し更地として売り出す方法も。更地にすることで悪い印象を改善し売却しやすくなる可能性があります。
ただし、更地にした場合、建物に比べ固定資産税や都市計画税が高くなってしまいます。また、更地にするための工事費用がかかります。
そもそも再建築ができない場合もあるので、更地で売却を進めるかどうかは不動産会社と相談することをおすすめします。
3.4:不動産会社に買い取りしてもらう
事故物件を早急に手放したい場合は、不動産会社に買い取りしてもらう方法があります。
買い取りの場合、不動産会社との条件に合意できればすぐに売却が可能です。
また、不動産会社に買い取りしてもらうメリットとして、近隣に気づかれずに売却できる点があります。
デメリットとしては、不動産会社が買い取りする場合、仲介売却するよりも価格がかなり低くなることです。
また、不動産会社によっては取り扱ってくれないこともあるため、確認が必要です。
4:まとめ
いかがだったでしょうか?
今回は事故物件の売却についてお伝えしてきました。
事故物件は悪い印象を持たれてしまい、通常の売却に比べると難しいといえます。
しかし、事故物件だということを報告せずに売買契約を結んだ場合、契約不適合責任を問われ損害賠償や契約解除といった事態に発展する恐れがありますので、必ず告知をするようにしましょう。
売却が難しいことは事実ですが、事故物件に対する考え方は人それぞれなので必ずしも売却できないということではありません。
ご自身が納得できる売却をするなら、不動産会社に相談し売却方法について検討することをおすすめします。