不動産を売ったときの利益は「譲渡所得」と呼ばれ、利益に対して所得税と住民税がかかります。
では、売却で得たお金に対して「どれくらい税金がかかるのか?」気になるところですよね。
今回は個人で所有する土地・建物を売却した時の譲渡所得の計算方法や税率についてお伝えしていきたいと思います。
1:譲渡所得
譲渡所得とは、一般的に土地、建物、株式、ゴルフ会員権などの資産を譲渡することによって生ずる利益のことをいいます。
不動産の譲渡所得に対しては、他の所得と分離して所得税と住民税が課税されます。なお、譲渡所得がマイナスの場合には課税されることはありません。
「譲渡」と聞くと無償で譲り渡すイメージがありますが、不動産取引においては「譲渡」というと有償の取引、すなわち「売却」となります。無償の取引の場合は「贈与」や「相続」になります。
1.1:譲渡所得の計算方法
譲渡所得の金額は、土地や建物を売った金額から取得費と譲渡費用を差し引いて計算します。
譲渡所得 = 譲渡収入金額 -(取得費+譲渡費用)ー 特別控除額
■譲渡収入金額
土地や建物を売却して得た金額のことです。売却代金の他に固定資産税や都市計画税の清算金も含まれます。
■取得費
取得費は不動産の取得するためにかかった費用の総額です。
具体的には以下のようなものが挙げられます。
・売却した土地または建物を取得した時の購入代金
・購入時の税金(印紙税、登録免許税、不動産取得税)
・仲介手数料
・測量費
・設備費、改良費
取得費が不明な場合や実際の取得費が売却価格の5%よりも少ない場合は売却価格の5%を取得費とすることができます。
■譲渡費用
譲渡費用は売却するためにかかった費用です。
具体的には以下のようなものが挙げられます。
・売却の際に支払った仲介手数料
・登記費用
・印紙税
・借家人に払った立ち退き料
・建物の解体費用
■特別控除額
特定の要件を満たすことを条件に、譲渡所得に対して特別控除が適用されることがあります。
1.2:譲渡所得にかかる税額
前回、空き家の相続にかかる税金のコラムでもお伝えしましたが、売却した際には所得税と住民税がかかり、総称して譲渡所得税といわれます。
では、譲渡所得税はどのくらいかかるのか?
以下、譲渡所得税の計算方法です。
譲渡所得税額 = 譲渡所得×税率
住民税額 = 譲渡所得×税率
1.3:所有期間によって変わる税率
譲渡した土地建物の所有期間によって税率は変わります。
長期譲渡所得
長期譲渡所得は譲渡した年の1月1日時点での所有期間が5年を超えている場合、税率は20%。内訳は所得税(15%)住民税(5%)となっています。
短期譲渡所得
短期譲渡所得は譲渡した年の1月1日時点での所有期間が5年以下の場合、税率は39%。内訳は所得税(30%)住民税(9%)となっています。
なお、贈与や相続による取得は、取得時期を引き継ぐこととなっています。
1.4:復興特別所得税
平成25年から令和19年まですべての納税者に復興特別所得税(基準所得税額の2.1%)が課税されます。
2:売却すると譲渡所得税はいくらになる?
では、実際に上記の計算方法を使って譲渡所得税がいくらかかるのかみていきましょう。
たとえば、一人暮らしの母の自宅(母所有の昭和55年建築の建物と土地)を令和5年3月に相続しましたが、空き家となっていました。この空き家を取り壊し、その土地を令和5年3月に3,600万円で売却しました。取得費は不明、解体費用に100万円かかりました。
なお、譲渡所得税は売却した翌年の確定申告の期間中に納税し、住民税は翌年度の6月以降に納付書が送られてくるので一括、もしくは年4回の分割で支払います。譲渡所得税の納税の際に「思っていたよりも納税額が少ない?」と思ってしまうかもしれませんが、住民税は支払う時期が違うため注意が必要です。
3:譲渡所得の特別控除
特別控除が適用されない場合、少なくない譲渡所得税を払わなくてはならなくなります。
では、譲渡所得の特別控除にはどんなものがあるのかを見ていきたいと思います。
3.1:譲渡所得の特別控除の種類
譲渡の種類とその特別控除額は、次のとおりです。
①公共事業などのために土地や建物を売った場合の5,000万円の特別控除の特例
②マイホーム(居住用財産)を売った場合の3,000万円の特別控除の特例
(被相続人の居住用財産(空き家)を売った場合の3,000万円の特別控除の特例)
③特定土地区画整理事業などのために土地を売った場合の2,000万円の特別控除の特例
④特定住宅地造成事業などのために土地を売った場合の1,500万円の特別控除の特例
⑤平成21年及び平成22年に取得した国内にある土地を譲渡した場合の1,000万円の特別控除の特例
⑥農地保有の合理化などのために土地を売った場合の800万円の特別控除の特例
⑦低未利用土地等を売った場合の100万円の特別控除の特例
3.2:特別控除についての注意事項
特別控除の適用を受けるには確定申告が必要です。控除の適用により納税額が0円になる場合でも申告は必要です。
また、特別控除には様々な種類があり、対象となる控除の種類によって適用条件は異なります。
特別控除額は合計5,000万円までが上限となっています。また、複数の特別控除が適用できる場合には上記①から順に適用されます。
それぞれの特別控除には、さらに細かい要件が設けられているため、詳細を確認して適用されるかどうかを判断しなくてはなりません。
4:まとめ
いかがだったでしょうか?
今回は個人で所有する居住用の土地・建物を売却したときの譲渡所得の計算方法や税率についてお伝えしました。
いざ売却して利益が出た時に、どのくらい税金がかかるのか大まかにでも把握しておくことは大切です。
また、特別控除が適用できれば大きな節税が期待できます。
もし、特別控除の対象になるのか不安な方は税理士やお近くの税務署に相談することをおすすめします。